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東京地方裁判所 昭和55年(ワ)9801号 判決 1984年6月26日

第一事件原告

東京海上火災保険株式会社

第一事件及び第二事件被告

平和運送株式会社

第二事件原告兼第三事件被告

中野忠男

第二事件原告

高橋文子

ほか三名

第二事件及び第三事件被告

梅田運輸株式会社

第三事件原告

同和火災海上保険株式会社

主文

(第一事件につき)

一  第一事件被告平和運送株式会社は、第一事件原告東京海上火災保険株式会社に対し、金九七万四六一〇円及びこれに対する昭和五五年九月二三日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

(第二事件につき)

二 第二事件被告平和運送株式会社及び同梅田運輸株式会社は、連帯して第二事件原告中野忠男に対し、金三一五万二一五七円及び内金二八五万二一五七円に対する昭和五五年二月一四日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

(第三事件につき1)

三 第三事件被告梅田運輸株式会社は、第三事件原告同和火災海上保険株式会社に対し、金四九万三七二五円及びこれに対する昭和五八年二月一九日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

(第三事件につき2)

四 第三事件被告中野忠男は、第三事件原告同和火災海上保険株式会社に対し、金一一一万三七〇〇円及びこれに対する昭和五八年二月一八日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

五 第一事件原告東京海上火災保険株式会社の第一事件被告平和運送株式会社に対するその余の請求、第二事件原告中野忠男の第二事件被告平和運送株式会社及び同梅田運輸株式会社に対するその余の各請求、第三事件原告同和火災海上保険株式会社の第三事件被告梅田運輸株式会社及び同中野忠男に対するその余の各請求並びに第二事件原告高橋文子、同高橋敏光、同高橋和行、同高橋勢津子の第二事件被告平和運送株式会社及び同梅田運輸株式会社に対する各請求をいずれも棄却する。

六 訴訟費用は、第一事件原告東京海上火災保険株式会社と第一事件被告平和運送株式会社との間に生じた分を三分し、その一を同原告の、その余を同被告の各負担とし、第二事件原告中野忠男と第二事件被告平和運送株式会社及び同梅田運輸株式会社との間に生じた分はこれを二分し、その一を同原告の、その余を同被告らの連帯負担とし、第二事件原告高橋文子、同高橋敏光、同高橋和行、同高橋勢津子と第二事件被告平和運送株式会社及び同梅田運輸株式会社との間に生じた分は、いずれも第二事件原告高橋文子、同高橋敏光、同高橋和行、同高橋勢津子の連帯負担とし、第三事件原告同和火災海上保険株式会社と第三事件被告梅田運輸株式会社との間に生じた分は、これを三分し、その二を同原告の、その余を同被告の各負担とし、第三事件原告同和火災海上保険株式会社と第三事件被告中野忠男との間に生じた分はこれを二分し、その一を同原告の、その余を同被告の各負担とする。

七 この判決は、主文第一ないし第四項に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

(第一事件)

一  請求の趣旨

1 被告平和運送株式会社は、原告東京海上火災保険株式会社に対し、金一三四万二三〇〇円及びこれに対する昭和五五年九月二三日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は、被告の負担とする。

3 仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は、原告の負担とする。

(第二事件)

一  請求の趣旨

1 被告平和運送株式会社及び同梅田運輸株式会社は、連帯して、原告中野忠男に対し、金六六二万七七〇五円及び内金六〇二万七七〇五円に対する昭和五五年二月一四日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

2 被告平和運送株式会社及び同梅田運輸株式会社は、連帯して、原告高橋文子に対し金八五〇万八二六二円、同高橋敏光、同高橋和行、同高橋勢津子に対し各金四一一万一九〇七円、及び原告高橋文子の請求の内金六六一万八二六二円、同高橋敏光、同高橋和行、同高橋勢津子の各請求金四一一万一九〇七円に対する昭和五五年二月一四日から各完済まで年五分の割合による金員を支払え。

3 訴訟費用は、被告らの負担とする。

4 仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1 原告らの請求をいずれも棄却する。

2 訴訟費用は、原告らの負担とする。

(第三事件)

一  請求の趣旨

1 被告梅田運輸株式会社は、原告同和火災海上保険株式会社に対し、金一六四万三五三〇円及びこれに対する昭和五八年二月一九日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

2 被告中野忠男は、原告同和火災海上保険株式会社に対し、金二七八万六四七〇円及びこれに対する昭和五八年二月一八日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

3 訴訟費用は、被告らの負担とする。

4 仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

(被告梅田運輸)

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は、原告の負担とする。

3  担保を条件とする仮執行免脱宣言

(被告中野忠男)

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は、原告の負担とする。

第二当事者の主張

(第一事件)

一  請求原因

1 事故の発生

昭和五五年二月一三日午後五時三五分ころ、岐阜県不破郡関ケ原町今須地内名神高速道路上り線(以下「本件道路」という。)において訴外伊東則男(以下「訴外伊東」という。)が運転する第二事件及び第三事件被告梅田運輸株式会社(以下単に「被告梅田運輸」という。)所有の貨物車(車両番号群馬一一あ四九二一、以下「梅田車」という。)が訴外大貫吉三(以下「訴外大貫」という。)運転の貨物車(車両番号多摩一一あ五五〇五、以下「大貫車」という。)に追突(右の事故を以下「第一事故」という。)し、両車両は本件道路三九四・六キロポスト付近(以下「本件事故地点」という。)の道路左側に停車した。そこへ訴外朴孝昭(以下「訴外朴」という。)が運転する第一事件及び第二事件被告平和運送株式会社(以下単に「被告平和運送」という。)所有の貨物車(車両番号大阪一一い六六八〇、以下「平和車」という。)が本件道路上を走行してきて右梅田車に追突(右の事故を以下「第二事故」という。)した。なおもその後、同じく本件道路上を走行してきた訴外亡高橋彪(以下「亡高橋」という。)が運転する原告中野忠男(以下「原告中野」という。)所有の貨物車(車両番号大宮一一か一四三四、以下「中野車」という。)が右平和車に衝突し亡高橋が死亡する事故(右の事故を以下「第三事故」という。)がそれぞれ発生した(右三回の事故を併わせて以下単に「本件事故」と総称する。)。

2 責任原因

(一) 訴外朴の過失

訴外朴は、本件道路上に約三センチメートルの積雪のある状況下において、時速約四、五〇キロメートルの速度をもつて走行していたのであるが、右状況下においては、ブレーキをかけると車両がスリツプし操縦不能の状態に陥るおそれがあるから、訴外朴としては、右の速度を減じ、ブレーキを踏んでもスリツプしないように車両を制御すべき注意義務があるのにこれを怠り、漫然と右速度で走行したうえブレーキをかけた過失により前記第二事故を発生させた。

(二) 亡高橋の過失

亡高橋は、車両運転中前方を注視し、不測の事態が発生した場合には直ちに安全な避譲措置をとるべき注意義務があるにもかかわらず、居眠りあるいは脇見運転により、先行車がスリツプして道路を塞ぐような態様で停止したことに気づかないまま、ブレーキをかけるなどの避譲措置をとることなく進行した過失により前記第三事故を発生させた。

(三) 訴外朴と亡高橋の共同不法行為

そして右の訴外朴、亡高橋の各不法行為は、時間的・場所的に接近して客観的に関連共同しているから、共同不法行為というべきである。

(四) 被告平和運送の責任

被告平和運送は、本件事故当時訴外朴の使用者であるところ、第二、第三事故は、訴外朴が同被告の業務執行中に発生させたものである。そして右第二、第三事故は、右に述べたとおり訴外朴と亡高橋の共同不法行為によつて生じたものであるから、被告平和運送は、民法七一五条に基づき右第二、第三事故により梅田車に生じた後記損害を賠償する責任を負う。

3 損害 金一三九万二三〇〇円

前記のとおり、梅田車は本件事故現場における三回の事故により損害を被つたが、右第一事故と第二、第三事故との損害は区別することができる。なぜなら、第一事故は梅田車が先行車(大貫車)に追突したのであるから、損傷箇所は梅田車のコツクピツト前面であり、第二、第三事故による損傷部位はアルミボデイー後側部である。そして右アルミボデイー後側部が破損したことにより、被告梅田運輸は破損部品の取替費として金一一二万七一〇〇円、修理費として金二六万五二〇〇円を要したが、右金額を合計すると金一三九万二三〇〇円となる。

4 保険契約の存在及び保険金の支払 金一三四万二三〇〇円

(一) 原告東京海上火災保険株式会社(以下「原告東京海上」という。)は、被告梅田運輸との間に、昭和五四年六月二〇日、前記梅田車を目的とし、保険金額を金三〇〇万円、保険期間を昭和五四年六月二〇日から同五五年六月二〇日までの一年間とする自動車車両損害保険契約を締結した。

(二) 原告東京海上は、昭和五五年五月一九日、右保険契約に基づき、被告梅田運輸に対し、前記梅田車の損害をてん補するため、保険金として金一三四万二三〇〇円を支払つた。したがつて、原告東京海上は、右金額の限度内で、被告梅田運輸が被告平和運送に対して有する損害賠償請求権を保険代位により取得した。

5 よつて、原告東京海上は、被告平和運送に対し、本件事故による損害賠償として金一三四万三四〇〇円及びこれに対する第一事件の訴状送達の日の翌日である昭和五五年九月二三日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1 請求原因1(事故の発生)の事実は認める。

2 請求原因2(一)(訴外朴の過失)、同(二)(亡高橋の過失)の各事実は認めるが、同(三)(共同不法行為)の主張は争う。同(四)(被告平和運送の使用者責任)のうち、被告平和運送が本件事故当時訴外朴の使用者であり、第二、第三事故が訴外朴において被告平和運送の業務執行中発生したものであることは認めるが、その主張は争う。

3 請求原因3(損害)の事実は不知。

4 請求原因4(保険契約及び保険金の支払)の事実は不知。

三  抗弁

(過失相殺)

訴外伊東の過失

(一)  前記第二事故は、幾重(一二台)にも連なつた、本件道路上でのいわゆる玉突衝突事故の一部であるが、第二事故前にすでに第一事故が発生し、訴外伊東及び同大貫はそれぞれ梅田車、大貫車を右車線上左側に停車させて話し合つていたものであつて、その際訴外伊東は、右梅田車を約一・六五メートル走行車線上にはみ出す形で停車させた。

一方訴外朴は、平和車を運転して時速約五〇キロメートルの速度で走行車線上を走行していたが、右平和車の前方を走行していた大型貨物車が突然右へ車線を変更したため、走行車線にはみ出して停車している梅田車を前方に発見して危険を感じ、ブレーキをかけたがスリツプをはじめたので、事故の回避が不可能と考え、自らガードレールに車体をこすりつけ制動しようとしたが間に合わず、自車右前部を梅田車の左後部に追突させたものである。

(二)  高速道路上における停車は、後続車の玉突追突を生じさせやすいので特に注意すべきものであり、とりわけ本件のように降雪によりスリツプの危険が高い場合には、駐車スペースのある非常駐車帯で停車すべきものであり、やむをえず右停車ができない場合においても、走行車線にはみ出さないように停車させ、高速道路用の三角形の故障車標識で自車の存在を他車に知らせるとともに、用件を短時間に切り上げて非常駐車帯に移動すべきものである。しかるに訴外伊東は、右の各注意を怠り、車両を走行車線にはみ出して駐車させ、しかも右故障車標識も掲げずに、長時間にわたり先行車の運転手と話しこんでいたため、平和車が梅田車に追突したものであり、この点において訴外伊東にも過失があつたというべく、その割合は訴外朴につき六の過失、訴外伊東につき少なくとも四の過失として損害額の算定にあたり斟酌されるべきである。

四 抗弁に対する認否及び反論

1 抗弁(一)の事実中、前記第一事故が発生し、訴外大貫、同伊東が両車両を停車させて話し合つていたこと及び梅田車に平和車が追突したことは認めるが、その余の事実は否認する。同(二)の事実は否認する。

2 訴外朴は、平和車を運転して名古屋方面に走行していたが、先行車が常にブレーキをかけるのに腹を立て、これを右側から追い越そうとしたところ、先行車が車線を変更したので再度走行車線に戻りながらブレーキを踏んだところ、スリツプして停止していた梅田車に追突したものである。

一方右第二事故が発生したのは、訴外伊東及び同大貫が、車外で四、五分話し合つた後、訴外伊東が梅田車を発進させようとした時であるが、同人は右停車の際非常点滅灯をつけていたし、道路左側のガードレールと梅田車左側面との間が約三〇センチメートルの位置に停車させていたものであつて、停止方法、停止時間は極めて妥当なものであり、同人に何ら過失はない。

(第二事件)

一  請求原因

1 事故の発生

第一事件一請求原因1事故の発生に記載のとおり

2 責任原因

訴外伊東は、前方不注視によつて前記第一事故を発生させたものであるところ、同人が梅田車を少なくとも数十センチメートル走行車線にはみ出させて停車させたことによる過失と訴外朴が、積雪によりスリツプしやすい状況にあるのに漫然とブレーキをかけた過失とによつて前記第二事故が発生し、さらに右両名の過失に基づき前記第三事故が発生したものである。

被告梅田運輸は訴外伊東の、被告平和運送は訴外朴のそれぞれ使用者であり、右各事故は訴外伊東、同朴がそれぞれ被告梅田運輸、同平和運送の各業務執行中に発生したものであり、また、被告梅田運輸は梅田車の、被告平和運送は平和車のそれぞれ保有者であるから、右被告両名は、連帯して、民法七一五条に基づき中野車の損傷に関する後記損害、また、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条に基づき亡高橋の死亡による後記損害を賠償する責任を負う。

3 損害

(一) 原告中野 金六六二万七七〇五円

(1) 車両損害 金二五五万円

中野車の本件事故当時の価格は金二七〇万円であつたが、同車は本件事故により修理不能となつたので金一五万円で売却せざるをえなかつた。したがつて、右の差額金二五五万円が損害となる。

(2) 撤去費用 金一八万七六七〇円

原告中野は、中野車を本件事故現場より関ケ原インターチエンジまで排除する費用として、訴外堀尾物産株式会社に対し金一一万八四〇〇円を支払い、また、同車を関ケ原インターチエンジから撤去する費用として、訴外埼玉日野自動車販売株式会社に対し金六万九二七〇円を支払つた。右金額を合計すると金一八万七六七〇円となる。

(3) 休車損 金一四七万四一一〇円

原告中野は、中野運送の名称で運送業を営んでいるものであるが、右事故により、中野車の代車が納入されるまで三〇日間休業せざるを得なかつた。右中野車は、一日あたり平均金四万九一三七円の利益をあげていたので、右期間中の損害は金一四七万四一一〇円となる。

(4) 訴外台成貿易株式会社(以下「訴外台成」という。)に対する補償 金一八一万五九二五円

本件事故当時、右中野車には訴外台成より運送依頼をうけたオリエントシート九五五七・五キログラムを積載していたが、本件事故のため右の積荷は破損して商品価値を喪失したため、原告中野は、その補償として訴外台成に金一八一万五九二五円を支払つた。

(5) 弁護士費用 金六〇万円

原告中野は、本件訴訟の提起追行を弁護士近藤繁雄に委任し、報酬として金六〇万円を支払うことを約した。

(6) 合計 金六六二万七七〇五円

右(1)ないし(5)を合計すると金六六二万七七〇五円となる。

(二) 原告高橋文子(以下「原告文子」という。)、同高橋敏光(以下「原告敏光」という。)、同高橋和行(以下「原告和行」という。)、同高橋勢津子(以下「原告勢津子」という。)(以上四名を以下「亡高橋の相続人ら」と総称する。)の損害

(1) 原告文子は亡高橋の妻であり、原告敏光、同和行、同勢津子は亡高橋の子である。

(2) 葬儀費用 金七〇万円

原告文子は、亡高橋の葬儀費用として金七〇万円を支出した。

(3) 逸失利益 金四二七五万三五八三円

亡高橋は、死亡時三四歳であるから、稼働年数は六七歳までの三四年間である。また、同人は事故前原告中野から月平均金二八万五七二七円の収入を得ていたから、右金額を基礎とし、生活費割合を三五パーセントとして新ホフマン方式によつて死亡時における逸失利益の現価を算出すると、金四二七五万三五八三円(一円未満切捨て)となる。

(4) 損害のてん補 金四〇〇〇万円

亡高橋の相続人らは、右損害につき自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)より金四〇〇〇万円を受領した。

(5) 右(3)の逸失利益から右四〇〇〇万円を控除すると残額は金二七五万三五八三円となるが、亡高橋の相続人らは、右金額を法定相続分に応じて相続した。

(6) 慰謝料

亡高橋の相続人らは一家の支柱である亡高橋の死亡により計り知れない精神的損害を被つたところ、これに対する慰謝料は、原告文子につき金五〇〇万円、原告敏光、同和行、同勢津子につき各金三五〇万円が相当である。

(7) 弁護士費用 金一八九万円

原告文子は、本件訴訟の提起追行を弁護士近藤繁雄に委任し、報酬として金一八九万円を支払うことを約した。

4 よつて原告中野は、被告平和運送及び同梅田運輸に対し、本件事故による損害賠償として、連帯して、金六六二万七七〇五円及び弁護士費用を除く内金六〇二万七七〇五円につき本件事故の日の翌日である昭和五五年二月一四日から完済まで民法所定の年五分の割合よる遅延損害金の支払を求め、また、亡高橋の相続人らは、被告平和運送及び同梅田運輸に対し、本件事故による損害賠償として、連帯して、原告文子にあつては金八五〇万八二六二円、同敏光、同和行、同勢津子にあつては各金四一一万一九〇七円、及び原告高橋文子の請求のうち弁護士費用を除く内金六六一万八二六二円、同高橋敏光、同高橋和行、同高橋勢津子の各請求金四一一万一九〇七円に対する事故日の翌日である昭和五五年二月一四日から各完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の各支払を求める。

二  請求原因に対する認否及び反論

(被告平和運送)

1  請求原因1の事実は認める。

2  請求原因2は争う。

3  請求原因3のうち(二)(4)の事実は認め、その余の事実は不知。

4  被告平和運送の反論

本件第三事故は、亡高橋の車間距離不保持、速度違反、前方不注視の各過失により生じたものであり、訴外朴は、前記第二事故による衝突というやむを得ない事態で停車していたものであつて同人に過失はなく、したがつて被告平和運送に損害賠償義務はない。すなわち、訴外小見山勉(以下「訴外小見山」という。)が大型貨物車を運転して関ケ原トンネルを二〇〇メートル過ぎた本件道路上を走行中、約二〇〇メートル前方に横向きになつて停車している平和車を発見し、エンジンブレーキで減速しつつ走行していたところ、中野車が右小見山車を追越し、そのまま平和車に衝突したものである。中野車がどの地点で小見山車を追越したかは必ずしも明瞭ではないが、中野車が追越車線を走行しているかぎり、同車の運転手である亡高橋は、訴外小見山と同じく二〇〇メートル手前で、前方に横向きに停車している平和車を認めたか又は認めることができたにもかかわらず、何ら減速することなく、約時速八〇キロメートルの速度で進行し(当時同車線は制限時速を五〇キロメートルと規制されていた。)、逆に追越をかけるなどして自ら衝突回避のいとまを失い、走行車線上で平和車に追突したものである。したがつて第三事故は亡高橋の一方的過失によるものといわざるをえない。

(被告梅田運輸)

1  請求原因1の事実は認める。

2  請求原因2は否認する。

3  請求原因3のうち、梅田車の自賠責保険より、金二〇〇〇万〇八〇〇円が亡高橋の相続人らに対し支払われたことを認め、その余の事実は不知ないし争う。

4  被告梅田運輸の反論

本件第三事故は、前記第一事故のため、訴外伊東・同大貫が、本件道路左側に車を駐車させて五、六分経過後、平和車がスリツプ走行してきて梅田車に接触し、平和車が走行車線と追越車線を塞ぐように停車し(第二事故)、そこへ中野車が走行してきて平和車に衝突し(第三事故)たものであつて、第三事故は、梅田車の動静に全く関係なく発生したものである。

仮りに梅田車の動静と第三事故との間に因果関係が存するとしても、第三事故は訴外高橋の一方的な過失(第一事件一請求原因2(二)記載のとおり)により発生したもので、訴外伊東には何ら過失はなく(第一事件四2記載のとおり)、梅田車には機能障害又は構造上の欠陥もないから、自賠法三条但書により免責される。よつて、被告梅田運輸には、原告中野、亡高橋の相続人らの主張する損害賠償義務はない。

(第三事件)

一  請求原因

1 事故の発生

前記第一事件一請求原因1事故の発生に記載のとおり

2 責任原因

(一) 被告梅田運輸

訴外伊東には本件事故発生につき過失があり(第一事件三記載のとおり)、本件事故の当時、同人は被告梅田運輸の被用者であつて、同被告の業務を執行中であつたのであるから、同被告は、民法七一五条に基づき平和車に生じた後記損害を賠償する責任を負う。

(二) 原告中野

亡高橋には本件事故発生につき過失があり(第二事件二4記載のとおり)、同人は、本件事故当時、原告中野の被用者であつて、同原告の業務執行中であつたのであるから、同原告は民法七一五条に基づき平和車に生じた後記損害を賠償する責任を負う。

3 損害

本件事故により、平和車は、車両前部、荷台中央部等に損傷を受け、修理費として金四八一万〇六七〇円を要した。このうち、梅田車との衝突により生じた車両前部の損傷の修理費用は金一七八万七一七〇円であり、中野車との衝突により生じたその余の損傷の修理費用は金三〇二万三五〇〇円である。一方平和車の時価額は金四七六万円であり、これは右修理費を下回るので全損事故と考えられる。そこで右時価額からスクラツプ価格金四五万円を控除した額に、右平和車の撤去費用である金一二万円を加えた金四四三万円を前記修理費に応じて按分すると、平和車は、梅田車との事故により金一六四万三五三〇円、中野車との事故により金二七八万六四七〇円の各損害を受けたことになる。

4 保険契約の存在及び保険金の支払 金四四三万円

(一) 原告同和火災海上保険株式会社(以下「原告同和火災」という。)は昭和五四年五月、被告平和運送との間に前記平和車を目的とし、保険金額を金五〇〇万円、保険期間を一年とする自動車損害保険契約を締結した。

(二) 原告同和火災は、昭和五五年七月右保険契約に基づき、被告平和運送に対し、前記平和車の損害をてん補するため、保険金として金四四三万円を支払つた。したがつて、原告同和火災は、被告平和運送が被告梅田運輸及び原告中野に対して有する損害賠償請求権を保険代位により取得した。

5 よつて、原告同和火災は、被告梅田運輸、原告中野に対し、本件事故による損害賠償として、金四四三万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である、被告梅田運輸においては昭和五八年二月一九日から、原告中野においては昭和五八年二月一八日から各完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否及び反論

(被告梅田運輸)

1  請求原因1の事実は認める。

2  請求原因2(一)のうち、本件事故当時、訴外伊東が被告梅田運輸の被用者であり、同被告の業務執行中であつたことは認めるが、その余の事実は否認する。

3  請求原因3、4の事実はいずれも不知。

(原告中野)

1  請求原因1の事実は認める。

2  請求原因2(二)のうち、亡高橋が、本件事故当時、原告中野の被用者であり、同原告の業務執行中であつたことは認めるが、その余の事実は争う。

3  請求原因3、4の事実はいずれも不知。

4  仮りに亡高橋に過失があるとしても、平和車は第三事故以前の第二事故により損傷を受け、上り車線を塞ぐ形で停車していたのであつて、第二事故による損害はもちろん、第二事故による損害だけでも運転不能となることが考えられるので、右平和車の撤去費用と第三事故との間に因果関係はない。

第三証拠関係

本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これをここに引用する。

理由

一  本件事故発生の事実(第一、第二、第三事件各一請求原因1事故の発生)は、第一、第二、第三事件の各当事者間に争いがない。被告平和運送は、本件事故当時、訴外朴の使用者であつて、第二、第三事故は、訴外朴が同被告の業務を執行中に発生したものであることは第一事件の当事者間に争いがなく、本件事故の当時訴外伊東が被告梅田運輸の被用者であり、同被告の業務の執行中であつたことは第三事件原告と同事件被告梅田運輸との間に争いがなく、亡高橋が本件事故当時原告中野の被用者であり、同原告の業務を執行中であつたことは第三事件原告と同事件の被告である原告中野との間に争いがなく、弁論の全趣旨によれば、右の各争いのない事実は、第一事件、第二事件、第三事件を通じ、右の各事実が争われていない各当事者以外の各当事者の間においても、これを肯認することができる。右認定に反する証拠はない。

二  本件事故の態様につき判断する。

1  本件事故地点付近の道路状況について

原告東京海上と被告平和運送との間において同原告主張の写真であることに争いがなく、弁論の全趣旨によりその余の当事者間においても右の点を認めることのできる甲第四号証、いずれも原告東京海上と原告中野、同亡高橋らの相続人との間において成立に争いがなく、弁論の全趣旨によりその余の当事者間においても成立を認めることのできる乙第一ないし第五号証及び弁論の全趣旨により成立の認められる丙第二号証並びに訴外朴、同伊東、同小見山の各証言によれば、本件事故地点は、名神高速道路上り線の関ケ原トンネル出口から約四〇〇ないし五〇〇メートル程度名古屋寄りの三九四・六キロポスト付近であつて、同地点は、進行方向左側のガードレールから約二・六メートルの幅の路肩部分、約三・七メートルの幅の走行車線、約三・七メートルの幅の追越車線及び約一・三メートルの幅の路肩部分からなる片側二車線のアスフアルト舗装道路であること、右関ケ原トンネルを出て右地点までは一〇〇分の五の下り勾配になつているほぼ直線に近い道路であり、本来、前後左右の見通しのよい道路であること、しかし、本件事故当時、右事故地点付近では、走行車線こそ比較的通りやすかつたものの路側帯側と中央分離帯側は雪が多くあつて通りにくく、車線上には約三センチメートル程の積雪があつたうえ、べた雪が激しく降つていたため、見通しは約五〇メートル前後の程度と悪く、路面は凍結し、指定最高速度は時速五〇キロメートルに規制されていたこと、右道路は幹線道路であつて通行量も多く、とりわけ本件事故発生時は、夕方の通行車両の多い時間帯であつたことがそれぞれ認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

2  事故車両の損傷状態について

(一)  梅田車

前掲乙第一号証、原告東京海上、同中野、同亡高橋の相続人らとの間において事故後の当該車両を撮影した写真であることに争いがなく、弁論の全趣旨によりその余の各当事者間においても右の点を認めることのできる検乙第一号証、第二号証、証人平澤壽の証言により成立の認められる甲第一号証、第二号証、証人伊東則男、同平澤壽の各証言によれば、梅田車は車長一一・九八メートル、車幅二・四九メートルの大型貨物車であつて、同車は本件事故により、左前部、左後部及び左右側板部がそれぞれ小破した事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

(二)  平和車

前掲乙第一号証、前同様の当事者間においては、前同様の写真であることに争いがなく、かつ、弁論の全趣旨によりその余の各当事者間においても右の点を認めることのできる検乙第三ないし第一三号証、証人竹田千秋の証言により成立の認められる乙第六号証、第七号証、証人朴孝昭、同竹田千秋の各証言によれば、平和車は、車長一一・七五メートル、車幅二・四九メートルの大型貨物車であつて、同車は本件事故により、左前面が小破し右前角部分は中破し、左側面の同車後部より約五・六メートルの部分から前部にかけて約二・三メートルにわたり陥没する等の損傷が生じ、右側面の同車後部より約七・八二メートルの部分に縦に損傷が生じたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

(三)  中野車

前掲乙第一号証、前同様の当事者間においては、前同様の写真であることに争いがなく、かつ、弁論の全趣旨によりその余の各当事者間においても右の点を認めることのできる検乙第一四ないし第一六号証、原告中野本人尋問の結果により成立の認められる丙第三号証、及び原告中野本人尋問の結果によれば、中野車は車長一一・七四メートル、車幅二・四九メートルの大型貨物車であつて、同車は本件事故により前部が大破したことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

3  本件事故の態様について

(一)  前掲甲第一号証、第四号証、乙第一ないし第七号証、検乙第一ないし第一六号証、丙第二号証、原告中野と被告梅田運輸との間において成立に争いがなく、弁論の全趣旨によりその余の各当事者間においても真正に成立したものと認められる丙第一号証及び証人伊東、同朴、同小見山の各証言並びに前記認定の本件事故現場の道路状況、各車両の損傷状況、弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実を認めることができる。

(1) 第一事故について

訴外伊東は、日本酒を満載した梅田車を運転して、本件道路上を京都方面から名古屋方面に向い走行していたが、同車の左前部が大貫車の後部に追突したため、両車は約二〇〇メートル程度走行した後、本件事故地点付近の道路左側に大貫車が前に梅田車が後ろになつて停車した。そして訴外伊東は、梅田車の非常点滅灯をつけた(しかし、高速道路用の三角形の停止標示板は設置しなかつた。)後、同車から下車し、右大貫車と梅田車の間のガードレール側において、訴外大貫と、ここでは危険なので養老インターで話そうなどと二、三分間会話をかわしたが、同車を下車した四、五分後には養老インターチエンジに向うため再び梅田車に乗車した。なお、右追突により梅田車には左前部キヤブ部分が凹む損傷が生じた。

(2) 第二事故について

一方訴外朴もまた、ステンレス浴槽を積んだ平和車を運転して本件道路関ケ原トンネル付近から先行する大型トラツクに追従し、時速五〇キロ前後で走行中、丁度同程度の速度で走行中の右先行車が何度もブレーキを踏むので、それにうつとおしさを感じた末、同車を追い抜こうと走行車線から追越車線に出たところ、右先行車もまた追越車線に出てきたため、再び走行車線に戻つたとき、約三八メートル前方に前記梅田車が走行車線と路肩との間の路側帯をまたぎ同車のおよそ右半分程が走行車線にはみ出しているようにみえる形で停車しているのを発見し、あわてて急制動をかけたため、平和車は折からの積雪でスリツプし、同車後部を約四五度程度にまで右にふりながら進行し、同車前部バンパー左角が左側ガードレールと衝突し、そのままスリツプして横すべりしながら進行し、同車右前角部分と梅田車左後部角フツク付近とが衝突し、平和車は本件道路と垂直に至らないまでも同道路を塞ぐような形で本件事故地点付近に停車した。そしてその際、平和車は左前部、右前角部分付近が、梅田車は左後部左側板部付近がそれぞれ損傷した。

(3) 第三事故について

前記第二事故後、亡高橋が後記オリエントシート(電気部品)一〇トンを積んだ中野車を運転して本件道路上関ケ原トンネルを出て、同トンネルから約二〇〇メートル名古屋寄りの地点付近を走行中、同所付近において時速約六〇キロメートルの速度で先行車である訴外小見山勉運転の大型貨物車(以下「小見山車」という。)を追越し、そのままの速度で進行し、本件事故地点付近の本件道路中央付近において、右道路をほぼ塞ぐような形で停車していた前記平和車の左側面中央部付近に衝突した。右平和車は衝突の衝撃で左に約四分の一回転しながら約二二・八メートル進行した後、同車前部を京都方面に向けて停車し、また右中野車は衝突後もそのまま約四一・三メートル進行して停止したが、中野車が平和車左側板部に衝突した際平和車左側板部と中野車前部が損傷し、右衝突によるシヨツクで平和車右側板部と梅田車右後部が衝突した際平和車右側板部がそれぞれ損傷した。

(二)  梅田車の第二事故前の停止位置について、原告東京海上及び被告梅田運輸は、梅田車は走行車線にはみ出して停車していなかつた旨主張し、乙第一号証(実況見分調書)、丙第二号証、及び証人伊東の証言中には右の主張に沿う部分があるので、検討する。すなわち乙第一号証(実況見分調書添付図面中)には、右梅田車の第二事故前の停車位置として、第二、第三事故後の停止位置として、そして地点は同車右側がほぼ路側帯上付近、地点とガードレールとの間の距離は〇・一メートルである旨の各記載があるが、地点については、前記のとおり第二、第三事故発生後の停止位置であるから、右両事故により右停止位置は移動しているものと推認され(右推認を左右すべき証拠はない。)、したがつて右第二、第三事故後の停止位置がガードレールから約〇・一メートルの位置であるからといつて、右両事故前の位置が路肩内にあるとは限らないし、また、第二、第三事故前の位置地点についてみると、右乙第一号証中には、同地点において梅田車の後部中央付近と平和車の右前部とが衝突した旨記載(同調書添付図面中の<×>地点)されているが、これは前記認定の梅田車と平和車の衝突状態と矛盾するのである。すなわち、前記認定の本件事故地点の道路状況、梅田車、平和車の損傷部位及び訴外朴の証言を併わせ考えると、平和車の左前部がガードレールと衝突し、その後同車右前角部分が梅田車と衝突したといわざるをえず、梅田車の後部損傷が左角部分である以上、平和車の右前角部分と梅田車の左後角部分とが衝突したと推認するのが合理的であつて、前記認定の事故態様からすれば、衝突時には平和車はおおむね後部を右にふりながら斜めに傾いた時であつたと推認され(この推認を左右すべき証拠はない。)るところ、平和車がかかる状態にありながら前記認定にかかる平和車及び梅田車の各部位が衝突するためには、梅田車は路側帯にまたがり、同車のおよそ右半分程度が走行車線にはみ出して停車していたと推認するほかはないのである。したがつて、乙第一号証中の記載中、右の推認に沿わない部分は採用できないものといわなければならない。次に、丙第二号証中の図面にも、梅田車が路肩内に停車している旨の記載が(略図1の<2>)があり、同図によれば同車左側面部が路肩中央よりやや左寄りとなつているが、前記認定のとおり、路肩部分の幅は二・六メートル、梅田車の車幅は二・四九メートルであるから、かような停車方法はありえないことになり(もし右の左側面部の位置が正しいとすれば、梅田車は走行車線に一メートル前後をはみ出していたことになる)。したがつて、右図面によつても梅田車が路肩内に停車していたと認めるには十分ではないわけである。更に、訴外伊東の証言中には、右停車の際、梅田車とガードレールの距離は約〇・三メートル程度であつた旨の供述(右供述のとおりとすると、梅田車は約〇・二メートル走行車線にはみ出していることになる。)があるが、路肩に積雪が多く路肩いつぱいに停車させにくい状態であつたことは同証人の証言中の他の供述部分から明らかなところであり、このような状況下において、梅田車が右〇・三メートルの距離までガードレールに寄つて停車できたかどうかは疑問なきを得ない(そればかりでなく、仮りに梅田車とガードレールの距離が〇・三メートルであつたとしても、証人伊東が見たのは、その証言中にもあるように、梅田車の前部とガードレールとの間の距離であつて、同車長が一一・九八メートルあることを考えると、同車後部においても右距離がやはり〇・三メートルであつたか否かは甚だ疑問である。)したがつて証人伊東の右証言部分は、いまだ前記認定を覆すに足りないものというべきである。他に前記(一)(1)ないし(3)の認定を覆すに足りる証拠はない。

三  訴外伊東、同朴、亡高橋の過失の有無

前記認定の事実関係をもとに、訴外伊東、同朴、亡高橋について過失の有無及びこれらがあるとした場合のいわゆる過失相殺をなすべき程度のいかんに関し検討を進める。

1  訴外伊東の過失の有無について

前記認定のとおり、本件道路は通行量の多い幹線道路であるいわゆる名神高速道路であるとともに、本件事故時はとりわけ通行量の多い夕刻という時間帯しかも天候は雪で見通しが悪く、道路面上には積雪も存するという状況であつたが、かような状況下において本件道路上に梅田車のような貨物自動車を兎に角停車させる場合には、右車両の運転者としては、他車両に対する道路交通上の危険性をも十分考慮に入れたうえで停車すべきものであり、いやしくも走行車線上にはみ出すようなことがあつてはならないのはもちろんのこと、たとえはみ出していない場合でも他車に対して停車車両たる自車の存在することを明らかにする手段を講ずるなど後行車両に対する安全にも配慮して自らの停車をなすべき注意義務があるものというべきところ、前記認定のとおり、訴外伊東は、路側帯をまたいで車両のおよそ右半分程度が走行車線にはみ出すような形で梅田車を停車させ、その際非常点滅灯はつけたけれども、三角形の停止標示板は、これを設置しなかつた事実が認められるのであるから、右停車方法は右注意義務に違反した停車方法というほかはなく、この点において同人に過失があつたものというべきである。

2  訴外朴の過失の有無について

前記認定のとおり道路状況下においては、事故発生の危険が高く、また、一旦事故が発生すると重大な事故になることが十分に予想されるのであるから、平和車のような貨物自動車を運転する運転者に対しては、適切かつ慎重な運転が強く要求され、無理な追越しをしないことはもちろん、追越しをできるだけつつしむと同時に急制動等も厳に避け、十分前方を注視して運転すべき注意義務があるのは極めて当然というべきところ、前記認定のとおり、訴外朴は、右のような道路状況への十分な配慮を欠き、先行車への追従にあきたらず、困難な追越しを試みたものの所詮無理であつて追い越せずに車線を右、左と変えただけで、追越車線から走行車線に戻つたとたん梅田車を発見して急制動をかけたが及ばず、そのまま第二事故を発生させたものであつて、同人には、右の点において、右注意義務に違反した過失があつたものというべきである。すなわち関ケ原トンネルを出た後、平和車と先行車は、共に時速五〇キロ程度で走行していたにもかかわらず、訴外朴は先行車を追い越そうとしたのであるから、先行車が走行中多少ブレーキをかけたにもせよ、右追越しは所詮困難で無理な追越しといわざるをえず、また、前記積雪状況からすれば、同人が本件道路上で停車をするには、徐々に減速しつつ停車に至るほかないものであるにもかかわらず、同人は、走行中この点の配慮も怠つていたため、無理な追越しをしようとした末に急制動をかける羽目に陥つて自車をスリツプさせたのであつて、この点において、訴外朴には大きな過失があつたものというべきである。

3  亡高橋の過失の有無について

前記認定の事実に照らすと、亡高橋は、前方不注視のまま、本件事故地点手前付近を制限速度を超える時速六〇キロメートルの速度で走行した過失があるというべきである。確かに走行車線前方が平和車によつて塞がれていたという事情があるにしても、前掲乙第五号証及び証人小見山勉の証言によれば、中野車に追い抜かれた小見山車が本件事故地点手前で停止していることが認められる(右認定に反する証拠はない)ことにかんがみても、同車が制限速度を守り、前方を十分注視していれば、右地点手前で停止することは可能であつたものとみるべく、この点において亡高橋も過失があつたものというべきである。

4  過失割合について

以上によれば、訴外伊東、同朴、亡高橋の三者のいずれかにも過失があり、本件道路全般の状況、本件事故の態様、右三者の過失内容など前記説示にかかる諸般の事情を総合し、事案全体を通観すると、<1>後記梅田車の損害については三〇パーセントの、<2>後記中野車及び<3>亡高橋の損害については各四〇パーセントの、<4>対被告梅田運輸に対する後記平和車の損害については七〇パーセントの、<5>対原告中野に対する後記平和車の損害については六〇パーセントのそれぞれ過失相殺による損害額の減額を行うのが相当である。

四  前記のとおり、各事件共に請求原因1(事故の発生)の事実については、当事者間に争いがないので、次に請求原因2(責任原因)以下について判断する。

1  第一事件

(一)  責任原因

前記認定のとおり、訴外朴、亡高橋のいずれにも過失があるが、前記認定の事実関係に照らせば、両者の加害行為は時間的・場所的に接近し客観的に関連共同しているものというべきであるから、両者はいわゆる共同不法行為の関係に立つものである。そして、前記のとおり、本件事故当時訴外朴が被告平和運送の被用者で、第二、第三事故は、訴外朴が同被告の業務執行中に発生したものであるから、被告平和運送は、民法七一五条、七〇九条に基づき、後記のとおり、梅田車に生じた第二、第三事故による損害を賠償する責任を負う。

(二)  損害

(1) 梅田車の損害

本件事故による梅田車の損傷部位は、前記認定のとおりであり、前記認定の事故態様からすると、同車左前部の損傷は第一事故により、また同車左後部、左右側板部の損害は、第二、第三事故によつてそれぞれ生じたものと認められる(右認定を左右すべき証拠はない。)ところ、前掲甲第一号証、証人平澤壽の証言により成立の認められる甲第二号証及び証人平澤壽の証言によれば、第二、第三事故による右損傷の修理にあたり、部分品価格として金一一二万七一〇〇円、工賃として金二六万五二〇〇円を要した事実が認められ、右認定に反する証拠はない。そうすると、第二、第三事故による梅田車の損害は、合計金一三九万二三〇〇円となる。

(2) 過失相殺

前記認定のとおりの過失がある訴外伊東は被告梅田運輸の被用者であるから、梅田車の損害について、前記三、4、<1>のとおり、三〇パーセントの過失相殺による減額を行うと、残額は金九七万四六一〇円となる。

(三)  請求原因4(保険契約及び保険金の支払)の事実は、証人松本正好の証言により成立の認められる甲第三号証、証人松本正好の証言及び弁論の全趣旨によりこれを認めることができ、右認定に反する証拠はない。そうすると、原告東京海上は被告平和運送に対し、金九七万四六一〇円の損害賠償債権を保険代位により取得したものというべである。

2  第二事件

(一)  責任原因

前記認定のとおり、訴外朴、同伊東のいずれにも過失があるところ、前記のとおり、本件事故当時訴外朴は被告平和運送の被用者であつて、第二、第三事故は訴外朴が同被告の業務を執行中に発生したものであり、訴外伊東は、被告梅田運輸の被用者であつて、本件事故当時同被告の業務を執行中であつたのであるから、被告平和運送、同梅田運輸は民法七一五条、七〇九条に基づき中野車に生じた損害を、また、弁論の全趣旨によれば、本件事故当時被告平和運送は平和車の、被告梅田運輸は梅田車のそれぞれ保有者であつたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はないから、右被告両名は、自賠法三条に基づき、亡高橋の死亡により生じた損害を、それぞれ賠償する責任を負う。

なお、被告平和運送は、訴外朴は第二事故というやむをえない事情で停車していたのであつて、中野車との衝突について同人に過失はない旨主張するが、訴外朴は、前記認定の過失に基づき道路を塞ぐ状態を作出したのであり、訴外朴の右過失と第三事故との間に相当因果関係があることも明らかであるから、被告平和運送の右主張は理由がない。

一方被告梅田運輸もまた、同車の運行と第三事故との因果関係の不存在及び免責の主張をするが、訴外伊東に過失があることは前記のとおりであるし、前記認定の事実関係にかんがみると、同人の過失と訴外朴の過失の競合より平和車が本件道路を塞ぐ形となつたため第三事故が発生したものというほかはなく、そうすると訴外伊東の過失と第三事故との間に相当因果関係があることも明らかといわなければならない。したがつて、被告梅田運輸の右の各主張も理由がない。

(二)  損害

(一) 原告中野

(1) 車両損害 金二五五万円

前掲乙第一号証、検乙第一四ないし第一六号証、原告中野本人尋問の結果により成立の認められる丙第三号証及び同本人尋問の結果と中野車の損傷部位が前記認定のとおりであることを総合すると、本件事故当時、同車の価格は金二七〇万円であり、同車は第三事故の結果修理不能となり、その後金一五万円で売却された事実が認められ、右認定に反する証拠はない。そうすると、右の差額である金二五五万円が中野車の車両損害となる。

(2) 撤去費用 金一八万七六七〇円

原告中野本人尋問の結果により成立の認められる丙第四号証、第五号証及び同本人尋問の結果によれば、原告中野は、中野車を本件事故地点より撤去する費用として金一八万七六七〇円を要した事実が認められ、右認定に反する証拠はない。

(3) 休車損 金二〇万円

原告中野本人尋問の結果により成立の認められる乙第六号証及び同本人尋問の結果によれば、原告中野は、中野運送の名称で運送業を営んでいるものであるが、第三事故により中野車が大破し、代車が納入されるまでの三〇日間休業せざるを得なかつたこと、同車は事故前一日あたり平均金四万九〇〇〇円程度の売上げがあつたが、右売上げから必要経費を差し引いた純益は一カ月あたり金二〇万円程度であつたことが認められる。なお、丙第六号証の記載は原告中野本人尋問の結果に照らして採用できないし、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。そうすると、右金二〇万円が第三事故によるいわゆる休車損となる。

(4) 訴外台成に対する補償 金一八一万五九二五円

原告中野本人尋問の結果により成立の認められる丙第七号証及び同本人尋問の結果と弁論の全趣旨によれば、本件事故当時、中野車は、訴外台成の依頼により、オリエントシートを積載運送していたものであるが、右のオリエントシートは第三事故により破損したため、その補償として原告中野は訴外台成に対して金一八一万五九二五円を支払つたことが認められ(同原告本人尋問の結果中右認定に沿わない部分は採用しない。他に右認定を左右するに足りる証拠はない。)、右は、第三事故による損害というべきである。

(5) 合計 金四七五万三五九五円

前記(1)ないし(4)を合計すると、金四七五万三五九五円となる。

(6) 過失相殺

前記認定のとおりの過失のある亡高橋は原告中野の被用者であるから、中野車の損害については、前記三、4、<2>のとおり四〇パーセントの過失相殺による減額をすべきである。したがつて、残額は金二八五万二一五七円となる。

(7) 弁護士費用 金三〇万円

弁論の全趣旨によれば、原告中野は、本件訴訟の追行を本件の訴訟代理人である近藤繁雄弁護士に委任し、金六〇万円の報酬の支払を約束した事実が認められる(右認定を左右すべき証拠はない。)ところ、第三事故と相当因果関係のある損害として賠償を求め得る弁護士費用は、右のうち金三〇万円とするのが相当である。

(8) 合計 金三一五万二一五七円

右(7)、(8)を合計すると、金三一五万二一五七円となる。

(二) 亡高橋の相続人らの損害

(1) 成立に争いのない丙第八号証によれば、本件事故当時、原告文子は亡高橋の妻であり、原告敏光、同和行、同勢津子はいずれも亡高橋の子であつたことが認められ、右認定に反する証拠はない。

(2) 葬儀費用 なし

原告文子が亡高橋の葬儀費用を支出したと認めるに足りる証拠は何もなく、かえつて原告文子本人尋問の結果によれば同人は右費用を支出しなかつたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。また、原告敏光、同和行、同勢津子が右の費用を支出したことを認めるべき証拠もない。そうすると、亡高橋の相続人らの右の点に関する請求は理由がない。

(3) 逸失利益 金四〇三〇万一〇八五円

前掲丙第八号証によれば、亡高橋は死亡当時三四歳であることが認められ、また、原告中野本人尋問の結果により成立の認められる丙第一〇号証によれば、亡高橋は、昭和五四年に年間金三八七万四四九九円の収入をあげていたことが認められる(右各認定を左右するに足りる証拠はない。)ところ、右の収入を基礎とし、生活費として三五パーセントを控除し、ライプニツツ式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して同人が六七歳に至るまでの三三年間の逸失利益の死亡時における現在価額を算出すると、次の計算式のとおり、金四〇三〇万一〇八五円となる。

3,874,499×(1-0.35)×16.0025=40,301,085

(4) 慰謝料 合計金一三〇〇万円

前記認定のとおり、原告文子は亡高橋の妻であり、原告敏光、同和行、同勢津子はいずれも亡高橋の子であるところ、原告文子本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、同原告らが亡高橋の第三事故による死亡により多大の精神的苦痛を被つたことが認められる(右認定を左右するに足りる証拠はない。)ところ、右精神的苦痛に対する慰謝料は、原告文子において金四〇〇万円、同敏光、同和行、同勢津子において各金三〇〇万円とするのが相当である。

(5) 過失相殺

前記認定のとおり、第三事故においては、亡高橋にも過失が認められるから、前記三、4、<3>のとおり、損害額につき四〇パーセントの過失相殺による減額を行うのを相当とするところ、右(2)(3)の合計金額につき過失相殺として四〇パーセントに相当する金額を控除すると、残額は金三一九八万〇六五一円となる。

(6) 損害のてん補

原告文子本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、第三事故による亡高橋の死亡に関する損害について、亡高橋の相続人らに対し、自賠責保険から金四〇〇〇万円が支払われた事実が認められ(ただし、亡高橋の相続人らと被告平和運送との間に右の点について争いがなく、亡高橋の相続人らと被告梅田運輸との間では右金四〇〇〇万円のうち金二〇〇〇万〇八〇〇円の支払いがあつた事実につき争いがない。)、右認定に反する証拠はない。

そして前記亡高橋の死亡に関する損害額から右てん補額を差し引くと残額はないから、右損害は全額てん補ずみということになる。

(7) 以上によれば原告文子、同敏光、同和行、同勢津子の本訴各請求は、いずれも理由がない。

3  第三事件

(一)  責任原因

前記認定のとおり、本件事故については、訴外伊東、亡高橋にそれぞれ過失を認めることができ、前記のとおり、本件事故当時、訴外伊東が被告梅田運輸の、亡高橋が原告中野の各被用者であつて、訴外伊東は被告梅田運輸の、亡高橋は原告中野の各業務の執行中であつたのであるから、被告梅田運輸、原告中野は、それぞれ民法七一五条、七〇九条に基づき、平和車に生じた後記損害を賠償する責任を負う。

(二)  損害

(1) 本件事故による平和車の損傷部位は前記認定のとおりであり、前記認定の事故態様及び前掲乙第六号証からすると、同車の左前面右前角部分の損傷は第二事故の際生じ、左右側面の損傷は第三事故の際にそれぞれ生じたものと認められる(右認定を左右するに足りる証拠はない。)ところ、証人竹田千秋の証言により成立の認められる乙第七号証、第八号証、証人竹田千秋の証言及び弁論の全趣旨によると、同車の修理費用として金四八一万〇六七〇円を要すること、右第二事故による損傷の修理費用としては金一七八万七一七〇円を要し、右第三事故による損傷の修理費用としては金三〇二万三五〇〇円を要するとそれぞれ推定されること、同車の時価額は金四七六万円であること、同車のスクラツプ価格は金四五万円であること、同車の撤去費用として金一二万円を要したことがそれぞれ認められ、右各認定を左右するに足りる証拠はない。右各事実によれば、時価額よりスクラツプ価格を控除し、撤去費用を加えた、金四四三万円が第二、第三事故による同車の損害となるものであるところ、弁論の全趣旨からすれば、右金額については、特段の事情を認めるべき資料のない本件においては、前記第二、第三各事故による修理費用の割合に応じて按分するのが相当である。そうすると、第二事故と相当因果関係のある車両損害は金一六四万五七五〇円、第三事故と相当因果関係のある車両損害は金二七八万四二五〇円となる。

なお、原告中野は、平和車は第二事故により運転不能となつたのであるから、第三事故と平和車の撤去費用との間に因果関係はない旨主張するけれども、証人竹田千秋の証言、前記認定の事故態様及び弁論の全趣旨を総合すると、第二事故によるフロント部の損傷及び第三事故によるプロペラシヤフト等の損傷等第二事故及び第三事故の全体が寄与して平和車の運行不能が決定的となるに至つたものと認められ、右認定を左右するに足りる証拠はないから、原告中野の右主張は採用しない。

(2) 過失相殺

前記認定のとおり、本件事故に関しては訴外朴にも過失が認められ、同人は、前記のとおり、第二、第三事故当時被告平和運送の被用者であつたのであるから、平和車の損害についていわゆる過失相殺をするのが相当であるところ、対被告梅田運輸との関係では前記三、4、<4>のとおり七〇パーセントの、対原告中野との関係では前記三、4、<5>のとおり六〇パーセントの割合による損害額の減額を行うこととする。

そうすると残額は、対被告梅田運輸の関係では金四九万三七二五円、対原告中野の関係では金一一一万三七〇〇円となる。

(三)  請求原因4(保険契約及び保険金の支払)の事実は、証人竹田千秋の証言によりこれを認めることができ、右認定に反する証拠はない。そうすると、原告同和火災は、被告梅田運輸に対し金四九万三七二五円、原告中野に対し金一一一万三七〇〇円の損害賠償債権を保険代位により取得したものというべきである。

五  結論

以上によれば、前記第一事件につき、同事件原告東京海上は同事件被告平和運送に対し、損害賠償として、金九七万四六一〇円及び右金員に対する第一事件訴状が同事件被告平和運送に送達された日の翌日であることが記録上明らかな昭和五五年九月二三日から完済まで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当として棄却することとし、前記第二事件につき、同事件原告中野は、同事件被告平和運送、同梅田運輸に対し、損害賠償として、連帯して、金三一五万二一五七円及び弁護士費用を除く内金二八五万二一五七円に対する本件事故の日の翌日である昭和五五年二月一四日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、第二事件原告中野の同事件被告平和運送、同梅田運輸に対するその余の各請求及び第二事件原告高橋文子、同高橋敏光、同高橋和行、同高橋勢津子の同事件被告平和運送、同梅田運輸に対する各請求は、いずれも理由がないから棄却することとし、前記第三事件につき、同事件原告同和火災は、損害賠償として、同事件被告梅田運輸に対し、金四九万三七二五円及びこれに対する第三事件訴状が同事件被告梅田運輸に送達された日の翌日であることが記録上明らかな昭和五八年二月一九日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において、また、同事件被告中野に対し、金一一一万三七〇〇円及びこれに対する第三事件訴状が同事件被告中野に送達された日の翌日であることが記録上明らかな昭和五八年二月一八日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度においてそれぞれ理由があるからこれらを認容し、第三事件原告同和火災の同事件被告梅田運輸、同中野に対するその余の各請求は、いずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条を各適用して主文第六項のとおりこれを負担させ、仮執行の宣言につき同法一九六条を適用し、なお第三事件について被告梅田運輸の申し立てた仮執行免脱の宣言はこれを付さないこととして、主文のとおり判決する。

(裁判官 仙田富士夫 古久保正人 芝田俊文)